2011年東北地方太平洋沖地震被害調査報告(第四報)

福島県南部〜茨城県北部の調査

Rev. 1.0 (2011/03/28)

3/13〜17の2011年東北地方太平洋沖地震による被害の調査に引続いて,3/24, 25に福島県南部と茨城県北部の調査を行いました。ガソリンの入手が困難であるため自動車による調査は行わず,この調査では鉄道でできるだけ目的地の近くまで移動した後,自転車で移動しました。

3/12〜17の調査報告はこちら

1. 調査の概要

今回の調査は盛川が一人で行いました。おおまかなルートは以下の通りです。

  • 3/24:すずかけ台キャンパス-東北新幹線 那須塩原駅 – 東北本線 黒磯駅 – (ここから自転車) – 黒田原駅 – (県道211号線) – 白坂駅付近 – (国道294号線) – 白河市 – (県道11号線,県道279号線,国道289号線) – いわき市勿来 –  (国道6号線) – 日立市
  • 3/25:日立市 – (国道245号線,国道6号線,県道358号線) – ひたちなか市

2. 那須塩原駅〜白河市

那須塩原駅では,新幹線高架橋下の非構造体の壁が少し剥落しているところがありました。しかし,駅から周囲を見渡しても目につくような被害はありませんでした。
(N36°55’53.29, E140°1’14.95)

黒磯駅周辺でも被害は見られませんでしたが,駅から少し北の県道211号線沿いの墓地では非常に多くの墓石が倒れていました。少し高い位置にあるため地形効果があるのかもしれません。また,この写真の向って右側に30mほどの場所で斜面が少し崩れているようでした(ブルーシートがかけてあったので細かいことはわかりませんでした)。墓石の転倒率が高いにもかかわらず,住家の被害はないようでした。
(N36° 59’25.76, E140°4’9.97)

東北本線黒田原駅ではプラットフォームの一部が崩落していて修理をしているところでした。この部分の下は線路と直角方向に谷が横切っていて川になっています。ボックスカルバートで谷をまたいでいるようですが,ボックスカルバートの周囲の盛土が少し移動していましたのでその影響でプラットフォームにも被害がでたのかもしれませんん。また,駅の下り側では線路の修理をやっていたので,線路になんらかの被害があったのかもしれません。さらに駅前の鉄骨造の構造物の壁が剥落していました。

(N37°1’24.59, E140°7’18.52)

黒田原駅の近くの墓地ではほとんど墓石が転倒していませんでした。
(N37°1’1.62, E140°8’12.12)

黒田原駅の下り側の次の駅である豊原駅の近くでは住家の瓦の被害が目につきました。宮城では瓦屋根の住家があまり多くなかったため瓦の被害があまり目につきませんでした。しかし,福島では瓦屋根の住家が多く,瓦に被害があるとブルーシートがかけられていることが多いため被害の多寡が視覚的に判断しやすいように思います。
(N37°3’31.06, E140°9’41.64)

東北本線が黒川(栃木県と福島県の県境)をわたる橋梁の下り側の切土部分の斜面が崩落して線路を完全に塞いでいました。近づくことができないので遠くから斜面の様子を見るだけでしたが,数十メートルにわたって崩落しているようでした。また,黒川をわたる橋梁の上り側の高盛土も防護工(?)の一部がずれているようでした。

(N37°4’30, E140°10’3)

白坂駅の北側の跨線橋(白馬橋)では,アバットメントの裏込め土が動いて段差ができていました。
(N37°5’58.96, E140°11’16.19)

3. 白河市周辺

白河市内へ入ると高台にある住家の瓦の被害が目につきます。また,下水管の埋め戻し土が液状化してマンホールが浮き上がっています。しかし,埋め戻し土だけではなくその周辺でも液状化しているようで,自動販売機が傾いています。

(N37°7’5.92, E140°12’10.51)

白河市の中心街は古い建物が多く残っています。しかし,相当古そうな建物でも壁が剥落したり,瓦が落ちたりしたような住家が時々見られる程度でした(左側の写真)。完全に崩壊したために既に撤去されと考えられる住家もありましたが,もともとどのような建物であったのかはわかりませんでした。街のなかでは右の写真のように外観からは被害はみられません。
(N37°7’40.61, E140°12’22.85)

阿武隈川沿いの県道11号線では,落石があって通行止めになっていました。数トンの落石が道を塞いでいます。
(N37°6’55.46, E140°14’39.55)

集落によっては他に比べて被害が目につくように感じる場合があります。県道11号線から県道279号線に入って南下したところの集落(板橋)では瓦の被害が目につきました。埋め戻し土の液状化もみられました。
(N37°6’42.85, E140°16’35.93)

私は福島県に来てはじめて気が付いたのですが,大谷石(?)やコンクリートブロックを使った組積造の建物がよく見られました。伝統的な土蔵の代りという位置づけではないか,という印象の建物ですが,倉庫などの用途で用いられているようです。組積造はすぐに被害をうけそうなイメージを持っていますが,私がみた限りでは下の写真の構造物が被害を受けた数少ない(実際にはただ一つの)事例でした。場所は,上の埋め戻し土の液状化が起っていた場所のすぐ近くです。

ところが,集落のはずれにある墓地では墓石はほとんど転倒していませんでした。田んぼに囲まれた1〜2mほどの盛り上がった場所に,表面を水平にならさないで非常に不安定な状態で多くの墓石が設置されているにもかかわらず,竿石が転倒していたのは1基だけでした。
(N37°6’36.94, E140°16’44.29)

4. 国道289号線〜いわき市勿来町

県道279号線から国道289号線に入るとあまり被害が目につかなくなりました。ところどころ,埋め戻し土が液状化していて道路が沈下している場所がありました。液状化しているところでは周辺の住家で瓦の被害が見られることが多いように感じました。
(N37°3’23.92, E140°20’14.54)
(N37°3’14.01, E140°21’25.32)
(N37°3’21.61, E140°21’57.29)

国道289号線は棚倉町をでて,水郡線を越えて東に向かうと塙町,鮫川村と険しい山に入ります。約20kmで400m以上登り,次の約30kmで700m以上を一気に下ります。この区間ではほとんど人家もなく,地滑りなどの被害も見られませんでした。自転車をこぐのが必死でほとんど周りを見る余裕がなかったということも影響しているかも知れません。

下の写真は国道289号線が常磐線を越える跨線橋です。跨線橋に添加されている歩道の階段部分が通行禁止になっていました。添加部分のコンクリートが一部剥落しています。構造的な損傷をうけているのかどうかはわかりませんでした。
(N36°53’47.66, E140°46’47.19)

国道289号線が国道6号線と交わるいわき市勿来町についたときには既に日がほとんど沈んでいました。そのため,残念ながら太平洋側での被害を調査することはできませんでした。

この後,国道6号線を南下して日立市まで35kmほど南下して宿泊しました。途中,北茨城市の海岸付近では津波によって破壊された多くの構造物がありましたが,暗闇でよく見えませんでした。

以上が,3/24の報告です。続きは,第五報へ。
宮城県〜岩手県南部(3/12〜17の調査)の報告はこちら
東北地方太平洋沖地震による被害調査のメニューへ戻る
(文責:盛川仁)

2011年東北地方太平洋沖地震被害調査報告(第四報) への2件のフィードバック

  1. 森 伸一郎 のコメント:

    盛川レポートへの勝手なコメント

    盛川さん。森です。さすが、素早いレポートですね。えらいですね。
    森のこれまでの26年の経験(現地調査と数値解析)で、経験を伝える意味もあり、自分が見たとしたら、と考えて今後の自分の調査に役立てるという立場で勝手なコメントをさせてもらいますと・・・

    ■那須塩原駅では,新幹線高架橋下の非構造体の壁が少し剥落しているところがありました。しかし,駅から周囲を見渡しても目につくような被害はありませんでした。

    写真の斜め亀裂とPC版の接続部被害から、5強から6弱。周りに本当に被害無いなら5強か?

    ■黒田原駅の近くの墓地ではほとんど墓石が転倒していませんでした。
    なら5弱~5強以下

    ■東北本線黒田原駅ではプラットフォームの一部が崩落していて修理をしているところでした。この部分の下は線路と直角方向に谷が横切っていて川になっています。ボックスカルバートで谷をまたいでいるようですが,ボックスカルバートの周囲の盛土が少し移動していましたのでその影響でプラットフォームにも被害がでたのかもしれませんん。また,駅の下り側では線路の修理をやっていたので,線路になんらかの被害があったのかもしれません。さらに駅前の鉄骨造の構造物の壁が剥落していました。

    プラットフォームの縁石落下なら6弱以上。線路の変形は6弱以上。

    ■東北本線が黒川(栃木県と福島県の県境)をわたる橋梁の下り側の切土部分の斜面が崩落して線路を完全に塞いでいました。近づくことができないので遠くから斜面の様子を見るだけでしたが,数十メートルにわたって崩落しているようでした。また,黒川をわたる橋梁の上り側の高盛土も防護工(?)の一部がずれているようでした。

    この程度であれば斜面崩壊は6弱程度、でも、過去に大きなゆれを経験していない場合は5強以上。

    ■白坂駅の北側の跨線橋(白馬橋)では,アバットメントの裏込め土が動いて段差ができていました。

    橋台裏の段差は5cmまでなら5強以上、5-20なら6弱以上、50cm以上なら6弱から6強

    ■白河市内へ入ると高台にある住家の瓦の被害が目につきます。また,下水管の埋め戻し土が液状化してマンホールが浮き上がっています。しかし,埋め戻し土だけではなくその周辺でも液状化しているようで,自動販売機が傾いています。
    瓦の被害の程度から見て6弱、埋め戻しの液状化は5強以上、自動販売機は倒れていたら6弱以上、傾き程度なら5強以上。

    ■阿武隈川沿いの県道11号線では,落石があって通行止めになっていました。数トンの落石が道を塞いでいます。

    この程度の石ならば、6弱以上でしょうね。

    ■集落によっては他に比べて被害が目につくように感じる場合があります。県道11号線から県道279号線に入って南下したところの集落(板橋)では瓦の被害が目につきまし

    た。埋め戻し土の液状化もみられました。

    下水管埋め戻し土の液状化の写真では、木造家屋では瓦が飛んで、壁に写真で見えるクラックが無かったので、震度5強でしょう。

      そのとなりの写真では瓦は大丈夫なようですので5弱かもしれませんね。局所的に。

    ■白河市の中心街は古い建物が多く残っています。しかし,相当古そうな建物でも壁が剥落したり,瓦が落ちたりしたような住家が時々見られる程度でした(左側の写真)。完全に崩壊したために既に撤去されと考えられる住家もありましたが,もともとどのような建物であったのかはわかりませんでした。街のなかでは右の写真のように外観からは被害はみられません。

    レポートと写真から、5強から6弱。町並みの建物は最近のものが多いですね。5強か。

    ■ところが,集落のはずれにある墓地では墓石はほとんど転倒していませんでした。田んぼに囲まれた1〜2mほどの盛り上がった場所に,表面を水平にならさないで非常に不安定な状態で多くの墓石が設置されているにもかかわらず,竿石が転倒していたのは1基だけでした。

    5弱でしょうか。竿石1本ですか・・・全部で何基合ったのかによりますが、せいぜい5強でしょうか。

    ■県道279号線から国道289号線に入るとあまり被害が目につかなくなりました。ところどころ,埋め戻し土が液状化していて道路が沈下している場所がありました。液状化しているところでは周辺の住家で瓦の被害が見られることが多いように感じました。

    5強から6弱でしょうか。

    ■下の写真は国道289号線が常磐線を越える跨線橋です。跨線橋に添加されている歩道の階段部分が通行禁止になっていました。添加部分のコンクリートが一部剥落しています。構造的な損傷をうけているのかどうかはわかりませんでした。

    5強から6弱でしょうか。

    • morika のコメント:

      森さん

      コメントありがとうございます。K-NETのデータも回収されたデータがすべて公開されたようですので,上の被害から森さん手法で予想される震度との対応などもみてみたいと思います。

      それにしても,すごい経験値ですね。勉強になります。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です